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11月14日: 朝日新聞記事

少し古いものだが、銀行の経営姿勢に関する記事が朝日に掲載された。
金融問題についてのスペシャリストである山田厚史記者のコラムである。

『朝日新聞』2009年10月04日 朝刊
(私の視点 記者の視点)モラトリアム 金融行政の軸足を債務者に 山田厚史

 亀井静香金融相が打ち上げた「借金モラトリアム」は、金融行政の盲点にいる「弱い債務者」に照準を合わせた。貸手である銀行にあった行政の軸足を「金融消費者」に移すのは時代の流れといえる。
 日銀統計によると全国145銀行の中小企業融資残高は7月末で177兆円。統計が始まった00年10月は229兆円だった。9年で52兆円減っている。どこに流れたのか。国債である。00年1月は48兆円だった銀行の国債運用はこの7月末で113兆円。65兆円も増加した。
 公的資金を注いだのは「銀行経営を助ける」のではなく「金融システム」を守るためと説明されてきた。産業の血液を毛細血管にまで流す。それが公的資金の大義だった。
 だが銀行は貸し渋り、安全な国債に逃げた。何が起きたか。「倒産件数は毎月1300件。今年に入って負債100億円以上の倒産の36%は資金手当てできない黒字倒産です」(友田信男・東京商工リサーチ情報部上席部長)。
 経営判断に委ねれば銀行は身を守るため貸し渋る。政策誘導が必要な局面である。
 銀行が3年ほど元本を据え置くのは無理なことではない。金利が入ることが大事なのだ。法律が出来て当局に指図され、経営の自由度が狭められるのはイヤだろう。ならば公的資金とは何だったのか。国が大株主になる「異常」な政策を受け入れたのは銀行自身だった。危なくなった時は「異常」もOKだが、債務者の危機なら関係ない、というのは理屈に合わない。
 米国ではサブプライム危機で返済できなくなった人が住宅から追い出されない政策がとられている。住宅金融公社がローンを安値で買い取り、その価格で低利のローンに切り替えて家主に提供する。元本も金利も安くなる。
 英国では住宅ローンが返済できない債務者に最長2年間利払いを延期するなどの支援策が4月から始まった。フランスには返済困難な個人が、地域の調停機関で返済延期や金利減免などができる。
 日本ではバブル崩壊のように政策や銀行に問題があった時でも、債務者は「自己責任」が問われ救済されることはなかった。返済猶予や金利減免は「恥ずべきこと」のように言われる。銀行保護に重点を置いた戦後の金融制度が庶民まで洗脳したのだ。だから整理回収機構などがローン債権を安く買い取っても債務者に恩恵はない。買い取り額を伏せ、買い取り前の元利を取り立てる回収が横行する。
 銀行主導の提案型融資で債務者に損害が出ても貸手責任は問われない。返済出来なければ翌日から14%の延滞金利が課せられる。銀行優位の慣行に零細債務者は泣かされて来た。政権交代は、その力関係を変える好機なのだ。
カテゴリー: 銀行被害
投稿者: webmaster
久々の更新になってしまいましたが、みずほ銀行の態度は今までと一切変わることなく、不誠実極まりないまま、貸し手責任ゼロを貫いています。そのためこれからも苦しい闘いは続きますが、今後ともご支援・ご拝読を頂けるなら幸いです。


『AERA』 2009年10月26日
(山田厚史の特ダネ記者魂:93)返済猶予は妥当、モラル崩壊は銀行にある

 借りたカネは必ず返す、利息も含め全額きちんと。律義な日本人らしい作法は借金返済にも及ぶ。警察官が強盗を働いてまで借金を返そうとするお国柄である。「カネがないから返せない」とあっけらかんとした異国では考えられない美風だ。
 そんな金銭感覚を反映してか亀井金融相が「返済に窮する中小企業や個人に返済猶予を」と言った途端「債務者のモラルハザードを助長する」と声が上がった。
 同じ頃、前原国交相の特命チームが日本航空に4000億円の金融支援を検討していることが明らかになった。1000億円単位の債権放棄が必要だという。「借金棒引き」である。支払いを先延ばしする返済猶予より遥かに重い負担を銀行は背負う。だがなぜか日航のモラルハザードを問う声は上がらない。
 大企業への借金棒引きは珍しくはないからだ。バブル崩壊後、銀行はゼネコンや流通資本などに百億、千億の単位で債権放棄に応じた。「ないから払えない」は日本でもまかり通っている。しかし中小企業や個人には「借りたカネは払え」である。
 銀行を30年ほど追いかけてきた記者経験から「役所・大企業に弱く中小・個人に厳しい銀行」を感じる。「中小企業融資は営業の柱です」と言ってはいるが、全国145銀行の中小企業融資は今年に入って9兆円も減った。リーマンショックで銀行に駆け込んだ大企業に資金を回すため中小企業から融資を回収したのである。民主党が「貸し渋り・貸し剥がし対策」をマニフェストに盛り込んだのもそのためだ。
 公的資金は、銀行を救うためではなく公共財である金融システムを護るためだった。経済の毛細血管にマネーを送ることが銀行の使命なのに中小企業は貧血状態だ。毎月約1300社が倒産し、職場を失う人が増えている。経済の底辺を支えることは雇用対策につながる。返済猶予を促すのは妥当な政策だ。
 「モラルハザードの心配は中小企業より銀行です」。作家の江上剛さんはテレビ番組の後、大塚金融副大臣に忠告した。政府は信用保証協会の保証枠拡大を検討しているが「危ない融資は保証枠に回して自分の貸金は回収する。銀行は平気でやるから金融庁はご注意を」。元銀行員の含蓄に富む指摘である。
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 やまだ・あつし◆1948年生まれ。朝日新聞シニアライター。元朝日新聞編集委員。著書に『銀行はどうなる』『日本経済診断』など。
カテゴリー: 銀行被害
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