久々の更新になってしまいましたが、みずほ銀行の態度は今までと一切変わることなく、不誠実極まりないまま、貸し手責任ゼロを貫いています。そのためこれからも苦しい闘いは続きますが、今後ともご支援・ご拝読を頂けるなら幸いです。


『AERA』 2009年10月26日
(山田厚史の特ダネ記者魂:93)返済猶予は妥当、モラル崩壊は銀行にある

 借りたカネは必ず返す、利息も含め全額きちんと。律義な日本人らしい作法は借金返済にも及ぶ。警察官が強盗を働いてまで借金を返そうとするお国柄である。「カネがないから返せない」とあっけらかんとした異国では考えられない美風だ。
 そんな金銭感覚を反映してか亀井金融相が「返済に窮する中小企業や個人に返済猶予を」と言った途端「債務者のモラルハザードを助長する」と声が上がった。
 同じ頃、前原国交相の特命チームが日本航空に4000億円の金融支援を検討していることが明らかになった。1000億円単位の債権放棄が必要だという。「借金棒引き」である。支払いを先延ばしする返済猶予より遥かに重い負担を銀行は背負う。だがなぜか日航のモラルハザードを問う声は上がらない。
 大企業への借金棒引きは珍しくはないからだ。バブル崩壊後、銀行はゼネコンや流通資本などに百億、千億の単位で債権放棄に応じた。「ないから払えない」は日本でもまかり通っている。しかし中小企業や個人には「借りたカネは払え」である。
 銀行を30年ほど追いかけてきた記者経験から「役所・大企業に弱く中小・個人に厳しい銀行」を感じる。「中小企業融資は営業の柱です」と言ってはいるが、全国145銀行の中小企業融資は今年に入って9兆円も減った。リーマンショックで銀行に駆け込んだ大企業に資金を回すため中小企業から融資を回収したのである。民主党が「貸し渋り・貸し剥がし対策」をマニフェストに盛り込んだのもそのためだ。
 公的資金は、銀行を救うためではなく公共財である金融システムを護るためだった。経済の毛細血管にマネーを送ることが銀行の使命なのに中小企業は貧血状態だ。毎月約1300社が倒産し、職場を失う人が増えている。経済の底辺を支えることは雇用対策につながる。返済猶予を促すのは妥当な政策だ。
 「モラルハザードの心配は中小企業より銀行です」。作家の江上剛さんはテレビ番組の後、大塚金融副大臣に忠告した。政府は信用保証協会の保証枠拡大を検討しているが「危ない融資は保証枠に回して自分の貸金は回収する。銀行は平気でやるから金融庁はご注意を」。元銀行員の含蓄に富む指摘である。
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 やまだ・あつし◆1948年生まれ。朝日新聞シニアライター。元朝日新聞編集委員。著書に『銀行はどうなる』『日本経済診断』など。